平成11年9月24日スポーツニッポン新聞北海道版掲載
人間のセックスとは
これまで半年間に渡って連載してきました「ドクター鈴木の役に“勃つ”診察室」も今回で最終回となりました。そこできょうはこれまでのテーマの柱となっていた「人間の性」、その意義について考えてみたいと思います。
人がセックスをしたいと思う欲求のベースには快感の追求があります。たしかにセックスにより快楽という代償が得られることは重要で、だからこそ人類はこれまでその種族を保存することが出来てきた訳です。しかし、快楽の追求だけが人間におけるセックスの目的だとしたら、その行為は低次元のものといわざるを得ないでしょう。
年を重ねたカップルは互いにもっと若い性的に魅力のある相手を求めるでしょうし、売春行為も容認されることになるでしょう。レイプなどの性犯罪や不特定多数とのセックスなども快楽を追及したいがために起きていることで、セックスのダーティーな部分を生み出しているのは、この快楽だけを追求した結果です。
しかし、人がセックスを行うのは快楽を求めるためだけではありません。では他にどんな目的でセックスを行うのかというと、互いの愛情のあかしとしてセックスは営まれます。私はこれこそが人としてのセックスの意義だと思います。愛する2人はいくつになっても触れていたいという願望があります。その延長にセックスがあるわけです。しかも、愛のあるセックスは自己の快楽追求だけでなく相手にも快楽を与えたいという思いやりが働きますから、結果的に互いに喜びを共有することが出来て、さらに愛情が深まるという相乗効果をもたらします。
この機会に考えてみよう!
このように人間におけるセックスはけっして低次元の行為ではなく、人がうるおいのある充実した生活を送るために重要な役割を果たすものです。そういう意味では、私が携わっている性機能障害の治療という分野も今後ますます重要視されていくことになるでしょう。