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Dr.鈴木の役に「勃つ」診察室

Dr.鈴木の体験談④ 平成11年9月3日スポーツニッポン新聞北海道版掲載

事故で下半身不随に・・・ある新婚男性の場合

セックスは愛する2人が互いの連帯感を強め、よりいっそう愛を深めるという重要な役割を果たします。しかし、それはお互いがセックスを愉(たの)しむという前提があってのことで、どちらか一方が犠牲的精神で無理を続けていると、かえって2人の関係がぎくしゃくしてしまうこともあります。
Kさんは28歳。数ヶ月前に結婚したばかりで、まだ甘い新婚生活を送っている時に交通事故に遭い、下半身不随となってしまいました。私のところにはED(勃起障害)の治療のため訪ねて来られました。診察の結果、血管作動薬の海綿体内注射が有効であることがわかり、Kさんは注射後、女性上位の姿勢であれば夫婦生活を持つことが出来るようになりました。
彼はこの成果を喜び、治療のため毎週注射を打ちに通うようになりましたが、そのうち徐々に表情が硬くなっていきました。私はどうにもそのことが気にかかり、ある時その理由を尋ねたところ、彼は泣きながら話し始めました。「先生、注射を打つと確かに勃起はします。挿入も出来ます。でも腰に負担がかかって、セックスの最中ずっとつらいのを我慢してるんです。妻はまだ若いし、夫婦生活がないのはかわいそうです。妻の浮気や離婚の不安も頭によぎります。そんなことを考えると治療を止めるわけにもいきません。これからは僕はその不安をぬぐいさるために、ずっとこのつらさを我慢しなければならないのでしょうか」。

犠牲的精神は禁物

しかし、ついに腰のつらさは我慢の限界を超えてしまい、Kさんは勇気を出して奥さんに自分の状態や不安を正直に話しました。奥さんはそれを聞いて、「私は大丈夫、あなた、無理をしないでね」と答えてくれたそうです。
それからKさんの注射はなくなりました。今は自然体に構えることにしたようで、体調の良い時だけ注射を打ちに来て、無理をしない程度にセックスを愉しんでいるのだそうです。その表情はとてもにこやかです。

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